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『100万回生きたねこ』ー新しい朗読という読書法の実践例です♪

  • 2025年11月16日
  • 読了時間: 5分

更新日:2月9日


虚構の作品世界を立ち上げるのは、語り手の言葉ーー語り手の体験とともに生まれる特別な言葉です。だからこそ、私たち読者は、その言葉と直結する「体験」を推察できるのですね。


今回は、佐野洋子さん作『100万回生きたねこ』の一文[どんなめすねこも、ねこのおよめさんになりたがりました。]を取り上げて、語り手の体験に近づいていくプロセスーー『新しい朗読』のステップ1(仮説を立てる)とステップ2(仮説を検証する)を実践してみます。


語り手をより意識しやすいように、百(ひゃく)さんと名付けて、さあ、はじめましょう。読み終わると、「語り手のくつを履くって…こういうことか」と頷けるかもしれません(^^♪




■「どんなめすねこも」という言葉にぴったりの体験ってどんなだろう?


まずはステップ1(『新しい朗読ー語り手の体験を生きる読書法』p34を参照して)に取り組もう。


〈身体〉ねことめすねこたちがいる場所にいるんだろうな。

〈五感〉目で見てるんだろうな。

〈脳〉「どんなめすねこも」という大きな認知回路が使われたのかな…


あのめすねこ、このめすねこ、あそこのめすねこ、こちらのめすねこ…と、何匹ものめすねこを、一匹ずつ確認するように目で追って(目で追いながら)、「どんなめすねこも」っていう認知の言葉が生まれたって考えるのが妥当だな。

じゃあ、自分の身体と脳を使って同じように体験してみよう。ステップ2だ。(同書p86 p87参照)


想像力でねことめすねこたちをイメージして、またまた想像力で、目の前に、現実との二重写しのように虚構世界を創り出すんだよな。…ねこは、そうそう、立派な感じ。トラ模様。オッケー。めすねこは…薄茶のしなやかなめすねこがいる気がする。あそこら辺にいるのは黒くて大きなめすねこで、その近くには細い三毛のめすねこ。もう少しこっちには灰色の小さめのめすねこがいる気がするぞ。そして、目はこんなふうに順々に動かしながら使って、脳は「どんなめすねこも」という認知回路を使う。


あ、違和感なく「どんなめすねこ」と認知できた気がするぞ。認知とともに「どんなめすねこも」という言葉も自然に生まれた。いい感じ。あと数回やって、言葉と体験の結びつきをしっかりさせておこう。…(体験と言葉がつながる感覚を繰り返す)…いいな。じゃ、次に進もう。



■「ねこのおよめさんになりたがりました」という言葉は、百さんのどんな体験とともに生まれたのだろう?言葉にぴったりの体験は…


すぐわかろうとせずに、ゆっくりと、少しずつだ。まずはステップ1(同書p34を参照して)


〈身体〉同じ場所にいるよな。

〈五感〉同じように目を使って、耳も使って…そんな感じかな。

〈脳〉「ねこのおよめさんになりたがってるな」と認識or思考したのかな…


何を見たら(聞いたら、嗅いだら、インプットしたら)、「おー、ねこのおよめさんになりたがってるな」と認識するのかな?

えーっと…めすねこ1匹1匹のしぐさがおよめさんになりたがってる感じだとすると、その様子を目からインプットして、「おー、ねこのおよめさんになりたがってるな」と左脳で認識しそうだな。ちょっとやってみよう。


ねこにすり寄っていくめすねこを見る。ねこの顔を舐めるめすねこを見る。ねこのしっぽにじゃれつくめすねこを見る。あ、別のめすねこがねこに鼻をくっつけた。…こういう有り様を目でキャッチして右脳にインプットしたら…。左脳は、「あ〜、ねこのおよめさんになりたいんだな」ってたしかに認識するぞ。その認識とともに、「ねこのおよめさんになりたがりました」という言葉が生まれたと考えるのは、妥当な気がする!


じゃあもう一度ちゃんとステップ2をやってみよう。


ステップ2は、想像力で目の前に作品世界を創り出すんだったな。ねこにすり寄っていく薄茶のしなやかなめすねこ…うん。見える気がする。ねこの顔を舐める黒くて大きなめすねこ、ねこのしっぽにじゃれつく細い三毛のめすねこも、なんとなく見える。私の想像力と創造力、いい感じ。あ、灰色の小さめのめすねこがねこに鼻をくっつけたの見えてきた。こういう景色の中に、語り手の百さん(語り手を、百さんと名付けました)は生きているんだよな。この様子を、目や耳から右脳にインプットする。めすねこ一匹一匹を観察する感じの目で視線を動かす。あ、甘えたような鳴き声も聞こえてきた気がするぞ。さあ、左脳はどうはたらくか?「このめすねこたちは、みんな、ねこが好きなんだな」と認識するな。「ふーん、わかったぞ」っていう感覚になる。


百さんはどうだっけ?…そうか、「ねこのおよめさんになりたがってるな」って認識したんだった。百さんのなかでは、好きイコールお嫁さんになりたいという感じなんだろうか。恋愛と結婚がつながるタイプなのかもな。認識とともに生まれた言葉を比較するのは面白いな。


同じ景色を見て、私の左脳は「好きなんだな」と認識する。けれど百さんの左脳は、「およめさんになりたがってる」と認識する。——この“認識の違い”が、言葉の違いになるんだ。


じゃあ、私も百さんのように認識してみるとしよう。「ねこのおよめさんになりたがってるな」…あ、それほど違和感もなく、けっこうすんなりできたぞ。結婚願望ゼロの人は、ちょっとモゾモゾするかもな。


さあ、今度は、認識とともに生まれた言葉「ねこのおよめさんになりたがりました」がすんなり生まれるまで繰り返そう。体験と言葉を結びつけていくぞ。


作品世界を生きてみて、そのとき生まれる認識が言葉になる。


「ねこのおよめさんになりたがってるな」、「ねこのおよめさんになりたがりました」…この景色のインプットと、「ねこのおよめさんになりたがりました」という言葉がぴったり合ってきた!


よし、これで百さんと虚構世界を一緒に生きられた気がする。言葉が生まれる瞬間に立ち会うのは、やっぱり面白いな。




新しい朗読の実践、いかがでしたか?あなたは、あなたの想像力で、どんなめすねこたちを創り出すのでしょう?


回数を重ねれば重ねるほど、語り手のくつを履くという試みに慣れてきますよ。自分のくつを脱いで語り手のくつを履いてみると、自分のくつのままでは気づけなかった語り手の感覚や心情にも、触れることができます。


お仲間のMさんが、「新しい朗読は、私にとって究極の他者理解の練習です」とおっしゃいました。私もそう思います。引き続き、体験する読書をたのしんでまいりましょう(^^♪

 
 
 

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