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読書領域の朗読:語り手/作者/朗読者の関係を考える

  • 1月23日
  • 読了時間: 4分

更新日:2月12日


サロンドマリコの提唱する新しい朗読は、「読書領域の朗読」を指します。


ここでいう読書領域とは、表現を前提とする上演領域とは異なり、あくまで「読書そのもの」を扱う領域です。詩や小説、エッセイなど、すでに音声を内包している言葉を対象とします。朗読者にとって、声は「出す」ものではなく、認知とともに自然に「出る」もの。体験の副産物です。


一方、上演領域では、台本と呼ばれる「音声になる前の言葉」を扱います。どのように声を出して表現するか、その技術を磨きます。したがって、上演領域の読み語りと、読書領域の朗読は、まったく異なる行為です。


読み語りが「聞き手に向けた表現行為」であるのに対して、朗読は「作品理解を深める読書法」といえます。サロンドマリコでは、朗読を次のように定義しています。


朗読の定義:語り手の体験と同じ体験を試みる体験行為


今回は、読書領域における「語り手作者朗読者」の関係について考えます。朗読は、声を目的とする表現行為ではなく、語り手の追体験を試みる体験行為だということを、最初にあらためて共有しておきましょう。



👉語り手って誰のこと?


定義にある「語り手」って作者のことでしょうか?

それとも、朗読者のこと?


結論からいうと、語り手作者は必ずしも一致しません。


そして、語り手朗読者は明確に異なります。これが読書領域のポイントです。朗読者は、語り手という他者に少しずつ近づこうとする私たちです。



語り手≠作者:詩や小説、物語


● 作者:現実世界の人

→ 虚構世界を設計し、「語り手」を設定する存在


● 語り手:虚構世界の住人(登場人物らが繰り広げるドラマを現場で体験)

→ 言葉で虚構世界を立ち上げる主体

→言葉と体験がぴったり合っている

→朗読者は、言葉を手がかりにして、どこまでも語り手の体験に近づいていける


● 登場人物:虚構世界の住人

→ 語り手に語られる存在


● 朗読者:現実世界の人

→ 語り手の体験を推察し、同じ体験を試みる存在


ここでは、作者と語り手は一致しません。朗読者は、体験とともに表出する音声を通して、仲間とその体験を共有し、話し合いを重ねて、ゆっくりと語り手に接近していきます。


仲間の力を借りながら、一人ひとりの体験は、一つの語り手の体験に限りなく収束していきます。



語り手=作者:エッセイ


● 作者=語り手(現実世界を生きる同一人物)

→言葉と体験はぴったり合っていない(読者に届けるため整えた言葉)

→朗読者が、言葉を手がかりに作者の体験に近づいていくのには限界がある


● 朗読者:現実世界の人

→作者の体験を推察し、作者と同じ体験を試みる存在


ここでは、作者と語り手は一致しています。朗読者は、朗読することで、限界があるからこそ生まれる各々の解釈(それぞれの語り手理解のありよう)を、仲間に示すことができます。



■まとめ


「作者」の気持ちや意図が気になる方も、まずは、「語り手」の追体験を試みましょう。語り手に対する理解が深まると、自ずと作者の気持ちや意図もわかってきますよ。


朗読とは、「語り手」に近づこうと試行錯誤する旅のようなものです。迷ったり、立ち止まったり、仲間の言葉に気づかされたりしているうちに、最初は他人事だった語り手の感覚や心情が、少しずつ自分ごとになっていくーーそんな豊かな旅を愉しむ体験です。


あなたも詩や小説を朗読するときには、「作者」と「語り手」を混同せず、「虚構世界を生きる語り手に近づく旅は愉しいな」と面白がってくださいね(^^♪




👉要約:語り手・作者・朗読者の関係


⚫︎ 作者(現実世界)

 → 虚構世界を設計する人

 → 語り手を設定する

⚫︎ 語り手(虚構世界)

 → 虚構世界を生きる

 → 認知や思考と直結した言葉で虚構世界を立ち上げる

⚫︎ 朗読者(現実世界)

 → 語り手の体験に少しずつ近づこうとする人

 → 言葉を手がかりに体験を追体験する

 → 音声は、世界を認知する身体の反応として自然に出る(副産物)



【特殊ケース:エッセイ】

⚫︎ 作者 = 語り手

→言葉は、読者に届けるために整えられている(認知や思考と直結していない)

⚫︎ 朗読者は作者の体験を推察して追体験

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