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文学作品の幸せな受け取りかた:「朗読」という読書法の提案②(入門テキスト)

  • 7 日前
  • 読了時間: 7分

更新日:10 時間前


最初に、前提を共有しておきましょう。


朗読は「上演領域」の行為ではなく、「読書領域」に属する行為。つまり、聞き手の感動を目指す表現行為ではなく、虚構世界を生きようとする体験行為です。



 ■ 朗読の定義


サロンドマリコでは、朗読を「語り手の体験と同じ体験を試みる体験行為」と定義しています。


世界を認知する身体の反応として、予測できない声が自然に出ます。これは、意識的に声を出す表現行為とはまったく別のものです。



■ 朗読は読書法である


 サロンドマリコは、朗読を「仮説と検証を繰り返し、少しずつ語り手に接近していく読書法」と捉えています。


仮説を立てる段階では、左脳(言語脳)と右脳(イメージ脳)をメインで使いますが、仮説を検証する段階では、左脳には少し休憩してもらって、右脳と(知覚する)身体の働きが中心になります。これが、とてもユニークなところです。


仮説と検証の反復を愉しんでいるうちに、語り手との距離は徐々に縮まります。寄り添って歩くとき、朗読者も「自分ごととして」作品世界を生きています。




☆[サロンドマリコの朗読メソッド]☆


それでは、朗読の具体的なプロセスをご一緒しましょう。こうしなければ…という決まりごとではありませんが、やっていくうちに、自然に身体に馴染むと思います。


 最初のテキストは、詩や児童文学などの短い文学作品です。「左脳」「右脳」という言葉は、情報処理の傾向を表すものとして便宜的に使っています。 



■ 準備①:一通り最後まで読む


ひとまず最後まで読みましょう。左脳(言語脳)メインで情報を処理しながら、あらすじをつかんでいく感じです。



 ■ 準備②:右脳でイメージする


あらすじがつかめたら、今度は、右脳(イメージ脳)にさらに活躍してもらいましょう。


 読む速度を落としたり、立ち止まったりして、虚構世界をイメージしながらゆっくり読んでみます。言葉を声に出すことで、イメージしやすくなる場合もありますね。声は、出しても出さなくてもどちらでもいいですよ。


語り手の言葉が、あなたの「強い感情を伴う記憶」にコミットすることで、あなた独自のイメージが生まれることもあるでしょう。


 ⚫︎ 何か見えてきましたか?色?形?景色?それとも…

 ⚫︎ 何か聞こえていますか?心地よい響き?騒音?それとも…

⚫︎ においを感じますか?どんな?


等々、ゆっくりと時間をかけて、脳内に虚構世界を立ち上げるつもりで進めましょう。


 「いつもの黙読と同じだ」と思いましたか?「えっ、2回も読むの?」と思いましたか? 読むといっても人それぞれです。作品にも、時と場合にもよりますよね。


黙読だとここがゴールかもしれません。しかし朗読では、ここまでが準備段階です。準備が整ったところで、さあ、始めていきましょう。



 ■ 仮説を立てる①:語り手の体験を推察し、脳内に虚構世界を立ち上げる


虚構世界を立ち上げる語り手の言葉は、「認知そのもの」と考えられます。


語り手の「認知」が、言葉として記述されたものが文学作品であり、私たち読者は、その言葉を手がかりに、語り手の認知を知ることができます。


この「認知」というのは、知覚・身体のありようと切り離せません。


だからこそ、私たち読者は、句読点や改行等で区切られた「一つひとつの語り」と直結する「脳(認知)・五感(知覚)・身体のありよう」に近づくことが可能になるのです。


 ⚫︎ この認知は、どんな知覚と同時に生まれたのだろう?

 ・〇〇を見たのだろうな

・〇〇が聞こえているのかな

・〇〇を感じているのかな…etc

⚫︎ その知覚は、どんな身体と直結しているんだろう?

・〇〇にいるのだろうな

・前のめりになっているかも

・位置をこう変えたのかな…etc


このように、語り手が見ているもの・聞いている音等々の仮説を立てながら、語り手の置かれている状況をイメージしていきましょう。


この段階で、最初にイメージした虚構世界の風景が様変わりすることもあるでしょう。そのままのこともあるでしょう。正解を急ぐ必要など少しもありませんよ。のんびり進めましょう。



■ 仮説を立てる②:虚構世界を、現実世界に二重映しのように立ち上げる


脳内にイメージした虚構世界を、現実世界にぼんやり映し出してみましょう。二重映しに見るような感覚です。


もちろんはっきり見えなくて大丈夫。見ようとする、感じようとする、それでじゅうぶんです。 「あ、なんとなく見える気がする」と思えたら、そんな自分を褒めてあげてくださいね。


 (現実世界に二重映しとなった)虚構世界の中心に、自分の「身体」があります。次に行う「仮説の検証」では、この身体を使います。



■ 仮説を検証する:虚構世界を自ら体験してみる


仮説をもとにイメージし、眼前の現実世界に二重映しのように立ち上げた虚構世界の中に、あらためて「自分自身の身体」を感じましょう。


落ち着いて、ゆっくりと味わうように進められるといいですね。


あなたの「その身体」は、何をどう知覚していますか? (あなたの五感はどう働いていますか?)


「その知覚」と同時に生まれる「あなたの認知」はどのようなものでしょうか?


「私の認知はどんなふうだろうな…」と考えて作り出すのではありませんよ。知覚した途端にふっと浮かぶのが認知です。


認知したままの言葉が、身体から「こぼれ出る感覚」をたのしみましょう。まるで独り言が自然に出ているような感覚です。声量はごく小さくても普段通りでも大丈夫。身体の反応ですから、身体に任せましょう。


 語り手と酷似した認知ならば、語り手と同じ言葉が生まれるのかもしれませんね。


でも、ひょっとしたら… 自分の認知を無視して、本当は語り手とはずいぶん違う認知なのに、語り手と同じ言葉を発しているのかもしれません。


そんな可能性も視野に入れて、自分の身体を丁寧にみてあげましょう。


感覚や感情に違和感はありませんか? 感覚も感情も、自然に湧いてくるもの。考えてつくるものではありませんよ。


言葉が出てこなかったり、違う言葉が生まれたりすることも、朗読の過程では当たり前です。そのときは、もう一度仮説を立てるところから始めれば大丈夫です。



■ 仮説と検証の反復


1回目より2回目、2回目より3回目、回を重ねるたびに、より具体的な虚構世界のイメージが、鮮明に立ち上がるようになってきます。


それに伴って、「目」や「身体」の使い方が繊細になってきます。 仮説が洗練されてくる感じでしょうか。


慣れないうちは、サロンドマリコがそっと伴走します。安心して試行錯誤にトライしましょう。


仮説と検証を繰り返すうちに、次第に、語り手が近づいてきます。語り手と同じ言葉が、違和感なく、自然に生まれるようになるまで、のんびりと反復を愉しみましょう。


 脳内に、「新しい認知回路」が敷設されつつあることを面白がる。これがコツかもしれません。



 ■ 虚構世界の体験を仲間と共有する


世界を認知した身体の反応として、語り手と同じ言葉が生まれるようになったら、その虚構体験を仲間と共有する段階かもしれません。


 朗読の音声は、朗読者の体験(どのように虚構世界を生きているか)と直結しています。したがって、その体験を皆で共有する手段となるのです。


体験の共有は、新たな発見や思いがけない気づきにつながることでしょう。言葉を交わすうちに、さらに語り手が近づいてきますね。


仲間とともに仮説と検証を重ねる時間そのものが、私たちに優しい悦びを与えてくれます。



■ まとめ


大事にしたいのは、虚構世界を「語り手とともに歩く」感覚です。


語り手と同じように見てみる。語り手と同じように聞いてみる。語り手と同じように感じてみる。そのとき湧き上がってくる心情や身体感覚を、きちんと立ち止まって、時間をかけて、じっくりと味わう。


この朗読の取り組みは、私たち大人にも「新しい体験」をプレゼントしてくれます。現実世界に戻ってくると、朗読する前の自分とは違う「新しい自分」に出逢えるかもしれません。


じつは、知覚に伴って、脳内では多くの認知回路が働きます。その中で、意識の光が当たった認知が「認知の言葉」として生まれるのでしょう。


ときに認知は、強い感情や欲求と繋がります。そして、「思考の言葉」が生まれたり、(言葉を経ずに)直ぐに行動に結びついたりします。


人間の脳の働きはとても豊かです。このあたりは、愉しく朗読を実践しながら、ゆっくり解明していきましょう♪





※関連ブログ

「文学作品の幸せな受け取りかた:『朗読』という読書法の提案①③」



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