

新しい自分と出会う旅
朗読は、上演領域で行われる朗読劇や語り・読み語りといった「上演行為」とは異なり、読書領域で行われる「読書行為」だと考えられます。 その実態は、「(語り手の)言葉の生成」に立ち会おうとして、自分から言葉が生まれる体験を軽快に重ねて、徐々に語り手に近づいていく営みです。「仮説と検証」の往還を 面白がっていると、やがて「文学体験」につながるように感じます。 文学作品の世界を自分ごととして生きようとするなかでの試行錯誤、それら全てを含めて、文学体験なのかもしれませんね。 試行錯誤の一つひとつが、私たちの脳をやわらかく耕してくれます。 すると…まるでふかふかに耕された土壌に初々しい芽生えがあるように、日常ではあまり使っていなかった認知回路が少しずつ働き始め、脳はゆっくりと成長していくのでしょう。 認知が変わると、見えている世界が変わります。 きっと、幾つになっても「新しい自分」と出会えます。 文学作品を仲間とともに享受する「朗読」。この読書行為を続けてきて、世界はよろこびと発見に満ちているーーそう実感できるようになりました。 あなたも、朗読(もちろん、「語
6月18日


私がととのう読書時間ー朗読という読書法の魅力ー〈3〉
「文学作品」とは何か。それを対象とする「朗読」とは何か。 問いと確認を繰り返しながら、朗読を、「文学作品の奥深さをていねいに味わう読書行為」として再発見してきました。この試みも最終回です。 連載をここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。 四半世紀にわたり朗読の存在意義を考え続けるうちに、朗読は、「文学作品を幸せに享受するための読書法」なのだと確信するようになりました。「朗読」と「音声表現(朗読劇や語り)」は、異なる領域に属する行為だと、しなやかにお伝えできるようにもなってきました。 私がいま生きているのは、「朗読教室」の講師を始めた頃には想像もしていなかった世界ーーなんとも面白い、そして、なんとも愛おしい世界です。 いっしょに朗読の道を歩いてくださる皆さま、応援してくださる皆さまのおかげで、こんなにも豊かな景色と出逢えました。心より感謝申し上げます。 ■ 2001年、「朗読教室」の講師を引き受ける 当時は、私自身も、朗読とは「声を出して読む行為」であり「音声表現」であるといったイメージを鵜呑みにしていました。 でも、朗読が対象とする「文
5月30日


私がととのう読書時間ー朗読という読書法の魅力ー〈2〉
『私がととのう読書時間 ー朗読という読書法の魅力ー〈1〉』では、朗読は、上演領域に属する表現行為とは異なり、読書領域における「作品世界を自分ごととして生きようとする体験行為」であることをみてきました。 今回は、「朗読という体験」へと進んでいきます。 ■ 朗読の定義 サロンドマリコでは、朗読を、「(文学作品の)語り手の体験と同じ体験を試みる行為」と定義しています。 語り手の体験と同じ体験を試みる過程で、身体の一つの反応として、自然にふっと言葉が生まれ出ます。言葉に付随して出る音声は、意識して整えた音声とは、そもそも生成のありようが異なります。 ■ 朗読は読書法である サロンドマリコは、「文学作品の世界を自分ごととして生きようとする読書法」として、朗読を提唱しています。 朗読者は、目の前の言葉を手がかりにして、語り手の体験について仮説を立て、自らの身体と五感と脳を使って検証します。 この仮説と検証の往還を、ときには一人で、ときには仲間とともに愉しんでいるうちに、語り手との距離は徐々に縮まり、自分ごととして作品世界を歩けるようになっていきます。 ☆
5月30日


私がととのう読書時間ー朗読という読書法の魅力ー〈1.5枠組み移行ガイド〉
「朗読なのだから、最終的には“誰かに向かう行為”だろう」と、まだ思っていますか? それは、理解不足や誤読のせいではなく、脳の自然な働きです。 さまざまな経験を積み重ねた私たちの脳は、個別の「枠組み」を持っています。そして、知らないことやわからないことに出会うと、まずは、この『既存の枠組み』で「処理」しようとします。 『新しい枠組み』を提示されても、脳は何度も『既存の枠組み』の側へ戻ろうとします。それは、まだ『新しい枠組み』を使い慣れていないからです。 前回のブログ記事[私がととのう読書時間 ー朗読という読書法の魅力ー 〈1〉]には、「朗読は読書領域の行為である」という『新しい枠組み』が提示されています。 でも、私たちの脳は、何度も、「朗読は上演領域の行為である」という『既存の枠組み』に戻ろうとするでしょう。 しょうがないですね。脳の自然な働きなのですから。 だからこそ、私たちは、「上演領域」に何度も引き戻されながらも、意識的に「読書領域」に戻り、語り手の体験と同じ体験を試み続けましょう。 その揺れの中で、『既存の枠組み』が静かにほどけて、
5月30日


私がととのう読書時間ー朗読という読書法の魅力ー〈1〉
「ほんとはこんなに豊かなんだ…。読めてると思ってたけど、わたし、読めてなかった。」 文学作品の世界を「自分ごと」として生きるとき、私たちは、その奥深さに包まれながら、「浅い読み方をしていた過去の自分」に気づくのかもしれません。 読者の私たちを変える可能性を持っているのが「文学作品」であり、その可能性を開くのが、作品世界を自分ごととして生きようとする「朗読」という読書法です。 これから、朗読とはどのような行為なのかをみていきましょう。「朗読は声に出して読む行為」「朗読は音声表現」というイメージは、いったん脇に置いておきます。 ■ 朗読が存在するのは、上演領域か?それとも読書領域か? この連載では、「文字言語だけで虚構世界が立ち上がる構造」を持つ文学作品を、朗読の対象とします。 さて、朗読は、音声を伴う行為です。 この「音声を伴う」ということから、私たちは自然に上演領域(音声を届ける行為の場)を思い浮かべ、「上演領域に朗読」という配置を、当たり前のものとして受け入れてしまいます。 しかし、観客を想定する「上演領域」に「朗読」を配置するのは、本当に適切
5月30日


「読書領域の朗読」へ:パラダイムシフト
「上演領域」から「読書領域」へ移行すると、座標軸は、 虚構世界を“届ける”から、虚構世界を“生きる”に変わります。 これは、朗読における「コペルニクス的転回」といえるかもしれません。 朗読という行為に、聞き手に届ける「音訳」のようなイメージ、創意工夫する「音読(読み上げ)」のようなイメージを持っている人にとっては、まさにパラダイムシフトと感じられる出来事なのだと思います。 ■ 中心が、朗読者から語り手へ 従来の朗読観は、 朗読者を中心 に据えます。 つまり、朗読者が語り手を解釈します。そして、その解釈を反映させた音声を聞き手に届けようとします。 朗読者は、聞き手に感動を与えることを目指し、表現に創意工夫を重ねます。 一方、サロンドマリコの提示する「読書領域の朗読」の朗読観は、 語り手を中心 に据えます。 ここでいう語り手とは、言葉によって虚構世界を立ち上げ、読者に体験を促そうとする言語主体です。 朗読者は、語り手の追体験を試みます。そうすることで、語り手に接近しようとします。 つまり、身体を使った「仮説と検証」の往還で、語り手に近づくことを目指し
2月22日


読書領域の朗読:世界の受け取り方が変わっていく
前回のブログでは、サロンドマリコの方法論をご紹介しました。 今回は、「読書領域の朗読」が私たちにどのような変化をもたらすのか、考えてみたいと思います。 ■ 読書領域の朗読は… 読書領域の朗読は、文学作品の言葉を、急いで意味に回収しません。つまり、解釈してわかったことにしません。(解釈を反映させて)表現することもしません。 言葉が生まれる脳・五感・身体に思いを馳せて仮説を立て、自らの身体で検証します。 仮説と検証を面白がって繰り返していると、徐々に語り手との距離が縮まります。語り手に接近したとき、自分のなかに初めての感情や感覚が立ち上がる…それを待ちます。 ■ 朗読がもたらすものは… 「読書領域の朗読」を通してこのような習慣を持つと、人の言葉を、結論よりも背景ごと聞けるようになります。出来事を、善悪や成功失敗だけで切らなくなるし、すぐ理解できない他者や状況に、居場所を残せるようになります。 これは、人間や出来事を味わえる脳になるということなのでしょう。 文学体験につながる「読書領域の朗読」は、 ・共感力が育ちます ・感性が豊かになります...
2月10日


サロンドマリコの方法論:「読書領域の朗読」入門テキスト
(注)ここで扱うのは、上演領域における「読み語り」ではなく、読書領域の「朗読」です。 サロンドマリコでは、読書領域の朗読を「語り手の体験と同じ体験を試みる体験行為」と定義しています。(世界を認知する身体の反応として、 予測できない声が自然に出ます 。意識的に声を出す表現行為とはまったく別のものです) 朗読は、「仮説と検証」を繰り返す読書法。検証の際には身体に助けてもらいます。その点がとてもユニークです。この反復を愉しんでいるうちに、語り手との距離は徐々に縮まります。 語り手に寄り添って歩けるようになると、私たち朗読者も(自分ごととして)作品世界を生きることができます。 今回は、朗読の具体的なプロセスをご一緒しましょう。こうしなければ…という決まりごとではありませんが、やっていくうちに、自然に身体に馴染むと思います。 最初のテキストは、詩や児童文学などの短い文学作品です。「左脳」「右脳」という言葉は、情報処理の傾向を表すものとして便宜的に使っています。 ■ 準備①:一通り最後まで読む ひとまず最後まで読みましょう。左脳(言語脳)メインで情報
2月8日
